復活の主日
2010年4月4日
新潟教会

「イエスは必ず死者の中から復活されることになっているという聖書の言葉を、二人はまだ理解していなかったのである」
　
　先日、事務仕事のために使っているデスクトップのコンピュータを買い換えました。古いコンピュータはまだ私が名古屋にいるころに買い求めたものですから、かれこれ１０年近く使ったことになります。よく働いてくれました。新しいコンピュータにこれまでの使っていたコンピュータのデータなどを移す作業というのがなかなか面倒であるのは、経験された方であればよくご存じのところです。加えてコンピュータというのはそれだけではただの箱ですから、自分が利用する仕事に応じてソフトをインストールしなくてはならない。そういった一連の移行作業をしながら、当たり前のことに一つ気がつきました。それは１０年近くも使ってきたのに、しかも朝から晩まで結構酷使してきたにもかかわらず、この１０年の間に一度も利用しなかった機能が、コンピュータにはまだまだ存在していたという事実であります。いまさらながらに、こんな機能があったのかとか、こんなプログラムが入っていたのかと、驚くことがたくさんありました。
　結局のところ私自身は、コンピュータを利用しているといっても、その能力のほんの一部、たとえば文章を作ったりメールをやり取りしたりインターネットでブログを書いたりという、限定された機能しか利用していない。せっかく用意されているコンピュータの能力の半分も利用せずに終わっているということに気がつきました。

　私たちの人生には結構この宝の持ち腐れが多々あるのではないかと思いいたります。人間の能力が、与えられた宝を十分に生かすところにまで到達していないということですし、逆にいえば、私たちに与えられている宝はそれほどまでに豊かであり、人間の知恵と理解をはるかに超えているということの証左でもあります。そうしてみるならば、私たちは一生懸命にこの人生を生きているとはいえ、せっかくの宝に気がつくこともなく過ごしてしまったっこともありうるということではないでしょうか。もったいない話であります。しかし同時に、まだまだ余力が隠されているということは気がつかなければ、結局のところ、それまでの話でもあります。気がつかなければ、その程度の範囲で人生を送ることができる。そしてコンピュータを買い換えるときに初めて余力の隠されていることに気がつくように、私たちも、もしかしたら、人生が終わるときになって初めて、それまで気がつかずに過ごしてきた隠された宝の存在に驚くのかも知れません。
　先ほど朗読された福音には、復活の日の朝の出来事が記されておりました。一体イエスに何が起こったのか、まだ誰も理解していないさまが記されています。
「イエスは必ず死者の中から復活されることになっているという聖書の言葉を、二人はまだ理解していなかったのである」

　３年間にわたってイエスと寝食を共にし、さまざまな教えを受け、その業を目の当たりにしてきた弟子たちであったのですが、結局この時点では、隠された宝に気がつくことがなかった。起こっている出来事の背後に豊かにある神の偉大な業の実現に気がつくことはなかった。
　もちろんその後に復活されたイエスとの出会いの中で、そして聖霊を受けることによって、弟子たちは背後に隠されていた宝、多くの人が気がつくこともなく人生を過ごしてしまう宝の存在に目が開かれるのです。もちろんそこは神の領域ですから人間の力が完全に及ぶところではありませんが、しかしその宝に目が開かれた弟子たちは、力強い宣教者へと変えられたのでした。
　私達の眼前にも神から与えられた宝が存在しているにもかかわらず、気がつかずに過ごしているのではないでしょうか。知らずに過ごしたとしてもたぶん人生の中でそれを苦痛に思うことはないのだろうと思います。使い切らずに終わるコンピュータのように、隠された宝があることに気がつかずにいたとしてもそれ自体は苦痛ではないように、私たちも神から与えられた宝に気がつかずに時を刻むことは可能でしょう。しかし、今日復活された主の出来事を再び耳にする時、私たちは神が示そうとされる偉大な宝に心の目を向けたいと思います。イエスとの出会いによって目が開かれ豊かな宝の恵みを受けた弟子たちのように、私たちも福音をいただき、聖霊によって導かれながら、力強い福音宣教者に変えられたいと思います。
　