主の降誕（夜半ミサ）
新潟教会
2008年12月24日夜

　お集まりの皆様、クリスマスおめでとうございます。
　私たちは毎日の生活の中で､果たして美しく輝いているでしょうか。人間は美しく着飾ることによって、表向きを輝かしく､また魅力的にしてしまうことが可能です。しかし美しく着飾ったからといって、それだけでその人物が輝く事になるのかどうかは､また別の話です。人間が「輝く」と言うとき、それはその人のありようの全体が、つまり生き方そのものが、他の人たちに対して形容しがたい魅力を放っているということを意味しているのであって、決してその外面がどのように美しく飾られているのかとは関係がありません。それでは人間は､どのようにしたら輝くことができるのでしょうか。

　日本の教会は今年11月24日に、188人の殉教者を聖人に次ぐ福者にして頂きました。400年も前の私たちの信仰の先達の生き方が、教会から勇気溢れる信仰のあかしであったと､公に認められたのです。その福者の中には、新潟教区の山形県米沢における53人の殉教者たちも、含まれていました。
　新潟教区の信仰の先達、米沢の殉教者、ルイス甘糟右衛門をはじめとする53人の人生こそ、わたしたちに「輝く」生き方の模範を示しているのではないかと､わたしは思います。たったひとりの人物、甘糟右衛門から始まったキリストへの信仰は、数年のうちに大勢の人たちに広まり、1629年の殉教の頃には、三千人を数えるほどであったとも言われています。しかも400年前の厳しいキリシタン禁教令の下で、決して公然と活動をすることができなかったにもかかわらず、燃えさかる炎のように､多くの人たちの心に広がっていったのです。その当時、信仰を選択することは、すなわち命がけである事を意味していました。生命を賭すことになる。それを知りながらも､多くの人たちが､この生き方を自ら選び取ったのです。そこまで人々を駆り立てるもの、それは一体何だったのか。
　その生き方を選び取らなければ、苦労することもなく、その当時の社会組織の中で平々凡々とした生活が待ち受けていたことでしょう。生命の危険にさらされることもなく､人生を全うすることができたのです。しかしその安定した生活をすべて捨て去って､生命を賭してまでも選び取りたいものが目の前にあった。それはルイス甘糟右衛門をはじめとした信仰の先達たちの、まさに輝かしい生き方であった。彼らの人生を貫いていた信仰のあかしの美しさに、多くの人々が魅せられたのです。平々凡々とした生活にはあり得ない、輝かしく美しい生き方を彼らがしていたからこそ、これほど多くの人が信仰を選び仲間に加わろうとしたのです。　

　先ほど朗読されたパウロのテトスへの手紙には､こう記されていました。
　「その恵みは、私たちが不信心と現世的な欲望を捨てて、この世で、思慮深く、正しく、信心深く生活するように教え、また祝福に充ちた希望、すなわち偉大なる神であり、私たちの救い主であるイエス・キリストの栄光の表れを待ち望むように教えています」
　殉教者たちの生き方は､まさしくこの言葉を具現化したものだったと思います。彼らの生活態度は、「思慮深く、正しく、信心深」いものであったのですが､それに加えて何よりも、「希望」に満ちあふれていたのです。正しい希望に満ちあふれた生き方は､多くの人を魅了する､美しく輝かしい生き方に違いありません。
　

　私たちの希望は、降誕の夜に暗闇を打ち破って明るく照らす光というしるしをもって示された､神の存在にあります。民全体に告げられる大きなよろこびは、希望の光であるからこそ、私たちに生きる道筋を指し示すのです。

　私たちの希望は、キリストが「良い行いに熱心な民をご自分のものとして清めるため」にこの世に来られご自身を捧げられたことにあります。降誕の事実によって､私たちは確信するのです。私たちは､不安と悩みの暗闇に捨て置かれた孤独な存在ではない。私たちは神のものとして愛されているのだ。希望を持ってそう確信します。

　私たちの希望は、神がこの世でもっとも弱い幼子としてこの世に来られたことにあります。この世を支配するありとあらゆる現世的欲望や価値観と､まったく関係のないところに幼子の存在はあります。幼子はまだその泥沼の中に生きてはいないからです。この世が約束するさまざまなよろこびに､神が与える本当のよろこびはありません。

　私たちの希望は、降誕のメッセージが､まず野宿する羊飼いたちに伝えられたことにあります。この世の権力や富とは無関係な立場にある羊飼いにこそ、神はまず大きなよろこびを告げたのです。この世を支配している地位や富を求めて競争する価値観、自分のことばかりを中心にして考える利己的な価値観に､本当の希望はありません。

　みこころに適う人に、地上の平和があると天使は告げました。私たちも神の平和に包まれ､最初に愛して下さった神の愛に信頼し、神の輝かしい栄光に希望をおき、平和のうちに、美しく輝かしい生き方をして参りましょう。
　