２００４年度卒業生の皆様へ

　皆さん、ご卒業本当におめでとうございます。
　これまでの学校での生活に様々な思い出をもって旅立たれる皆さんの前には、決して楽園とはいえない、厳しい社会の現実が横たわっています。皆さんには、この学校において身につけられた知識と倫理観を、これからの社会の中で生き抜いていくための、強力な味方として頂きたいと思います。　

　この半年ほどの間に私たちは、新潟での水害や地震をはじめとして、スマトラ地震に伴う津波の被害など、世界の各地で頻発する大規模な災害を目の当たりにしました。科学が発達し、特に先進国といわれる日本のような国で生活していると、時に人間がこの世界の森羅万象を操作し、支配することができるという錯覚に陥ることがあります。人類はかつて不可能と思われてきたことを、この数十年の間に次々と可能にしてきました。確かに人類の進歩にはめざましいものがあり、科学の力がすべてを可能としてくれるかのような錯覚に、私たちが陥るのも無理ありません。しかしこれらの災害を目の当たりにし、また津波のすさまじい威力の前になすすべもなく飲み込まれてしまった被災者の姿を見るとき、人類が心の底に抱いているすべてが可能だという自信は、尊大な幻想として崩れ去ります。そして私たちは、このすさまじい威力を持つ自然を作り上げた、人間の知恵を遙かに超える力の存在を感じざるを得ないのです。わたしたち宗教家は、そういう存在を「神」と呼びます。様々な自然災害にさらされるとき、人間は尊大に自己過信のうちに生きるのではなく、遙かに偉大な力を持った神の前にへりくだり、謙遜に生きることを学ぶのです。
　学校を卒業し、社会に巣立っていく皆さんには、これまで以上に、大人としての自覚と責任を持って生きていくことが求められるでしょう。２１世紀の世界を担う大人へと成長していく皆さんには、世界規模での兄弟姉妹との連帯という意識を持って、世界各国の兄弟姉妹と手をつなぎ、協力することによって、神のみ前で、一つの家族を作り上げるという理想を持って頂きたいと思います。

　旧約聖書のイザヤ書に、次のように書いてあります。
「雨も雪も、ひとたび天から降れば、むなしく天に戻ることはない。それは大地を潤し、芽を出させ、生い茂らせ、種蒔く人には種を与え、食べる人には糧を与える。そのように、わたしの口から出るわたしの言葉も、むなしくは、わたしのもとに戻らない。それはわたしの望むことを成し遂げ、わたしが与えた使命を必ず果たす。」
　本日卒業式を迎えられた皆さんは、キリスト教精神による教育をこの学校で受けられました。皆さんお一人お一人の心の内に、何らかの形でキリストの言葉が残っていることでしょう。もしかしたら宗教の時間のことはもう忘れてしまったのかもしれません。でもこの聖書の言葉にあるように、神の言葉はむなしくまかれることはありません。畑にまかれた種のように、いつか芽を出す時を待っているのです。これからの人生の中で、皆さんが人類家族の一員として、世界中の兄弟姉妹と手をつなぎ、困難に立ち向かうときが来るのかもしれません。そのようなときに、この学校で蒔かれた神のみ言葉が、皆さんを導き助ける力となってくれるでしょう。ご卒業にあたり、皆様に神の祝福を祈ります。
　ご卒業、おめでとうございます。

（２００５年３月、聖霊高等学校、聖霊短大などいくつかの学校の卒業生の皆様へのメッセージです）